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監修:三村 麻子(あなたを忘れない株式会社 代表取締役)
親が元気なうちに確認しておきたいことの代表が、「お金」に関する情報です。
しかし、「遺産目当てと思われるのでは」「がめついと思われたくない」という心理的なハードルから、なかなか話を切り出せないという声も多く聞かれます。
そこでまず意識したいのは、親のお金は「将来受け取る遺産」ではなく、「親自身の介護や生活を支える資金」だという考え方です。視点を変えるだけで、話し合いはぐっと進めやすくなります。

「親のお金」と聞くと、つい「遺産」「相続」という言葉を思い浮かべてしまいがちです。
しかし、その視点で話を切り出そうとすると、子の側にも後ろめたさが生まれ、親の側にも警戒心が芽生えやすくなります。お互いに身構えてしまっては、話は深まっていきません。
そこで、視点を「親自身の生活と介護を支える資金」に置き換えてみましょう。
「もしものときに、親に困ってほしくないから」「いざというときに、希望に沿った介護を受けてほしいから」という動機なら、子の側もまっすぐに気持ちを伝えやすくなります。
親とお金について話す際は、いきなり「資産の話」をするよりも、介護に関する話題から入るほうがスムーズです。
たとえば「介護が必要になったら、どのように考えている?」と尋ねると、多くの親は「子どもに迷惑をかけたくない」「施設への入居を考えている」と答える傾向があります。
この流れの中で、具体的な選択肢や費用について自然に触れることができます。会話を重ねながら、親が不安に思っていることが、お金なのか孤独なのか、それとも家族関係なのか――その本音を少しずつ探っていきましょう。
一度の会話で結論を出そうとしないことが大切です。
複数回に分けて少しずつ深めていくほうが、親の本音も出やすく、家族としての方針も自然に固まっていきます。「答えを出す」のではなく「考えを共有する」場、と捉えていただければ十分です。
① 公設・社会福祉法人の運営
地方自治体が税金で設備し、社会福祉法人に運営を委託している。月額費用は年金額および資産に応じた金額。非営利のため、入居できたら宝くじに当たるようなもの。
・軽費老人ホーム(ケアハウス):介護度が要支援1〜要介護2までの自立して生活ができる高齢者向け。元気な時に申し込み順番を待つことができる。
・特別養護老人ホーム(特養):要介護3以上で介護者不在が条件。入居待ちが非常に長く、地域住民でないと基本入居できない。
② 民間の設備・経営
・有料老人ホーム:民間企業の経営なので当然営利。費用はピンキリだが、ピンであっても年金で賄えないので、資産がないと厳しい。
もし親が施設入居を希望している場合は、現実的な費用感を共有しておくことが大切です。
「すぐに入れる施設」と「待てば入れる安価な施設」では、必要な資金規模が一桁単位で変わってきます。親の希望と家計の現実、その両方を見ながら検討することが大切です。
介護費用を考えるうえで、「何歳まで生きることを想定して資金を備えるか」という視点も重要です。
東京都の有料老人ホームでは、月額費用の中央値が約30万円とされています。一方で、年金受給額の中央値は約15万円。つまり、毎月15万円、年間にすると180万円の不足が生じます。医療費などを含めると、年間の不足額は少なく見積もっても約200万円に達します。
仮に金融資産が2,000万円ある場合でも、年間200万円の不足が続けば10年で資金が尽きる計算になります。近年は寿命が延びているため、100歳まで生きる前提で備えることが安全といえるでしょう。
この前提に立つと、金融資産2,000万円の場合、90歳以前に有料老人ホームへ入居すると資金ショートのリスクが高まることになります。
逆に、80歳から入居する場合には、約4,000万円の金融資産が必要となり、長期的な介護費用を見据えた資金計画の重要性が浮き彫りになります。
数字を出すと不安になることもあるかもしれません。けれども、目的は「足りる・足りないを判定すること」ではなく、「どれくらいの規模感の話なのかを家族で見える化すること」です。
そのような情報を具体的に共有することで、親自身も「介護資金がどれだけ必要か」をイメージしやすくなります。これが、「親自身が自分の老後を考える」第一歩にもなります。
多くの親は、「自分の財産は、いずれ子に渡るもの」と考えがちです。
しかし、自分や配偶者の介護にどれほどの費用がかかるかまで、具体的に想定している方は多くありません。「介護にかかるお金」と「子に残すお金」が、意識のなかで混ざり合っていることがしばしばあります。
そこで、親の側にも「自分の老後を支える資金」という考え方を、やわらかく共有してみてください。
「私たちは大丈夫だから、まずはお父さん・お母さん自身のために使ってね」という言葉は、お金の話というより、親への気遣いとして伝わります。視点が「子どもへ残す」から「自分のため」に切り替わると、親の表情が少しほぐれることも多いものです。
「大丈夫、十分にある」と親に言われても、実際に介護資金が不足してしまえば、最終的に困るのはご家族です。
また、資金はあるのに、認知症の進行などで本人が引き出せなくなり、子どもが苦労するケースもあります。「あるのに使えない」状況は、思っている以上に多く起こります。
将来に備えるためには、家族信託や任意後見制度といった仕組みを早めに知っておくことも一案です。
専門家に相談する前段階として、まずは家族で「もしものとき、誰がどんな役割を担うか」を話し合っておくだけでも、いざというときの対応がぐっと楽になります。
基本的には、親自身の生活と介護に使う資金として考えるのが現実的です。無理に遺産を残そうとするより、安心して過ごしてもらうための備えを優先するほうが、結果的にご家族のためにもなります。
元気で判断力がしっかりしているうちが最適です。介護や老後の話題をきっかけに、自然に切り出すのがおすすめです。早すぎる、ということはありません。
施設や期間によって幅がありますが、月数万円〜十数万円の自己負担が長期間続くこともあります。総額で数百万円〜数千万円規模になるケースもあるため、長期的な視点で考えることが大切です。
特別養護老人ホーム(特養)は公設で非営利ですから比較的安価ですが、入居待ちが長いのが現状です。民営の有料老人ホームはすぐに入れる反面、入居一時金や月額費用が高額になる傾向があります。
認知症などで本人が引き出せなくなると、介護費用の支払いに困ることがあります。事前にご家族で大枠を共有しておくことが、トラブル防止と安心につながります。
親子で介護資金について話し合い、将来に必要な費用を明確にしておくことは、結果的にご家族全体の安心につながります。
「遺産」という捉え方ではなく、「親の生活と介護を支える資金」という視点で向き合うこと――それが、円滑なコミュニケーションと準備の第一歩です。今日この記事が、ご家族の対話を始める小さなきっかけになれば幸いです。
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あなたを忘れない株式会社
代表取締役 三村 麻子(みむら あさこ)
<想送庵カノン(滞在型安置施設)の運営>
故人と家族が「最後に過ごす時間を大切にする」セレモニーホール
<専門学校>
東京ホスピタリティ・アカデミー
葬祭ディレクター学科 講師
<供養コンシェルジュ>
供養コンシェルジュ協会 理事/講師
<看取りサポートのパイオニア>
高齢者を支える家族に
「疲れない介護」「家族が幸せになる看取りと葬送」を提案。
【看取りの水先案内人として幅広く活動】
家族に深く寄り添う相談スタイルで、
生前のご相談から、お見送りのあとのグリーフケアまで
多数の相談実績と活動歴を持つ終活の専門家。
2004年に葬儀式場の運営に携わって以来、
葬送の現場に立ち続けている。
2019年には、安置と面会に重きを置いた施設として
想送庵カノンを開設。
<サポート内容>
生前整理、介護、葬儀、供養、遺品整理、グリーフケア
<著書>
・初めて喪主になる人のための親を心から見送る葬儀ガイド
・親が死んだ5分後にあなたがしなければならないこと
・離れて暮らす親と上手に付き合うための本
・親には一人暮らしをさせなさい
・親の老後に寄り添うために知っておきたいこと
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