親の好みや希望を知っておくことの重要性|介護に役立つ心の準備

親の介護の話シリーズ第8回 親の好みや希望を知る介護に役立つ心の準備の記事アイキャッチ画像

監修:三村 麻子(あなたを忘れない株式会社 代表取締役)

親が元気なうちに「どんな老後を過ごしたいか」を聞いておきたい——。そう思って話を切り出してみたものの、「前と言っていることが違う」と戸惑った経験はありませんか。

結論から言えば、親の意見が変わるのはごく自然なことです。それは、頼りなさや迷いのあらわれではなく、現実が近づくにつれて気持ちが揺れ動いている証でもあります。

この記事では、親の気持ちの変化の背景と、介護準備に活かすための向き合い方を、想送庵カノンの寄り添う視点でやさしく整理します。

目次

親の意見が変わるのはなぜ?背景にある3つの理由

編みぐるみで作られた高齢の親世代4人がゲートボールを楽しむ、親の好みや趣味を表した人形

① 老後が「現実」として近づいてくる

若い頃は漠然としていた老後も、年齢を重ねるにつれて現実味を帯びてきます。

その結果、「施設に入る」「自宅で過ごす」といった選択に対する考えが揺れ動きやすくなります。これは判断力の低下ではなく、現実が近づいたことで初めて見えてくる悩みなのです。

② 不安や恐れが大きくなる

加齢により、健康・孤独・経済面などへの不安が増していきます。その日の体調や気分によって、判断や発言が変わることも珍しくありません。

③ 自分でも気持ちを整理しきれていない

長い人生を歩んできたとはいえ、老後の選択に「正解」はありません。だからこそ、親自身も迷いながら考えている状態なのです。

「意見が変わる親」への向き合い方

一度の発言で結論を出さない

「この前はこう言っていたのに」と決めつけるのは避けましょう。その時々の気持ちとして受け止めることが大切です。

繰り返し対話することが前提

老後の希望は、一度の会話で固まるものではありません。定期的に話すことで、少しずつ本音が見えてきます。

言葉の裏にある感情をくみ取る

表面的な発言よりも、その奥にある感情に目を向けることが大切です。

  • 不安:先のことが見えない怖さ
  • 寂しさ:家族や友人と離れたくない気持ち
  • 恐れ:迷惑をかけたくないという思い

言葉そのものより、何を感じてその発言をしているのかに耳を傾けることが、ご家族にできる一番の支えです。

介護に役立つ「親の好き」を知っておく重要性

なぜ「好き」が重要なのか

介護が必要になったとき、親の好みを知っているかどうかで、日常の質が大きく変わります。

  • 気分転換がしやすくなる
  • 会話のきっかけが増える
  • 安心感や笑顔につながる

これは身体的なケアだけでなく、心のケアにも直結する大切な情報です。

特に大切なのは「若い頃の記憶」

10代・20代の頃に親しんだものは、人生の中でも特に強く記憶に残りやすい特徴があります。

  • 音楽(当時のヒット曲・愛聴していた歌手)
  • 映画やドラマ
  • 趣味(手芸・園芸・スポーツなど)
  • 好きだった食べ物・飲み物

たとえ認知機能が低下しても、こうした記憶は比較的保たれやすく、コミュニケーションの大切な手がかりになります。

親の好みを自然に引き出す方法

質問より「体験」を重視する

「何が好き?」と直接聞くだけでは、うまく思い出せないこともあります。そこで有効なのが、体験を通じたアプローチです。

一緒に外出してみる

レストランやカフェに行ったり、買い物に同行したりすることで、食の好みや居心地の良さを自然に確認できます。

音楽や映像を一緒に楽しむ

昔のヒット曲を流したり、懐かしい映画や番組を一緒に見たりすると、表情や反応から本当の好みが見えてきます。

日常会話の中でさりげなく聞く

  • 「昔よく行ってた場所は?」
  • 「若い頃ハマってたことって?」
  • 「初めて買ったレコードって何だった?」

自然な会話の中で、無理なく引き出すのがポイントです。

介護前にやっておきたい準備としての「会話」

情報収集ではなく「心の準備」

親の希望や好みを知ることは、単なる情報収集ではありません。それは、将来の介護における「心の準備」でもあります。

会話がもたらす効果

  • 本人の尊厳を守る
  • ご家族のストレスを減らす
  • 家族関係を良好に保つ

日常的な会話の積み重ねが、いざというときに大きな安心と納得感をもたらします。

補足|さらに詳しく

「好きだったもの」がお見送りの輪郭をつくる

ご逝去後のお別れの場で、ご家族が「これで良かったのだろうか」と迷われる場面は本当に多いものです。その迷いをやわらげてくれるのが、生前にうかがっていた「好きだったもの」の記憶です。好きだった音楽、いつも飲んでいたお茶、季節ごとに楽しんでいた花。こうした小さな手がかりが、お見送りの空間を「その方らしい場」へと変えてくれます。

エンディングノートに書きやすい7つのテーマ

「希望を聞く」と身構えると、ご本人もご家族も話しづらくなります。日常会話の延長で、次のようなテーマから少しずつ書き留めていくと、自然と全体像が見えてきます。

好きな食べもの・飲みもの(ご逝去後の供物の参考にもなります)

好きな音楽・愛読書(お別れの会で流す音楽の選定に役立ちます)

趣味や打ち込んできたこと(思い出コーナーの飾りつけに)

大切にしていた場所(散骨や供養の場所選びの参考に)

思い出の写真(遺影候補のヒントに)

大切な方々のお名前(訃報連絡の優先順位に)

お別れの場の雰囲気のご希望(落ち着いた式・賑やかな会・家族のみ など)

「答えなくて良い」という余白も大切に

ご本人が答えにくそうにされたときは、無理に書いてもらわなくて構いません。「またいつか、気が向いたときに」と余白を残しておくほうが、ご家族との関係をすこやかに保つことができます。ご家族のペースで進めてください。

よくあるご質問(FAQ)

親の意見が毎回違って困るときはどう対応すればよいですか?

一度の発言で結論を出さず、その時々の気持ちとして受け止めるのがおすすめです。時間をおいて何度か話すことで、本音や全体的な傾向が少しずつ見えてきます。「揺れるのが普通」と捉えると、関わる側も気持ちが楽になります。

親が老後の話を嫌がる場合はどうすればいいですか?

無理に聞き出そうとせず、日常会話の延長で少しずつ触れるのが効果的です。食事や思い出話、若い頃のエピソードなど、自然な流れの中で聞いていくと、緊張感なく話してもらいやすくなります。

親の好みはどこまで把握しておくべきですか?

音楽・食べ物・趣味など、日常生活に関わるものを中心に把握しておくと役立ちます。特に若い頃の好みは、認知機能が低下したときの大切なコミュニケーションの手がかりになります。

認知症になった場合でも好みは役立ちますか?

はい、大いに役立ちます。若い頃の記憶は比較的残りやすく、当時親しんだ音楽や思い出の話が、安心感や穏やかな表情を引き出すきっかけになります。介護現場でも積極的に活用されている方法です。

親の希望はすべて叶えるべきですか?

すべてを実現する必要はありません。大切なのは希望を知り、気持ちに寄り添うこと。そのうえで現実的に可能な範囲を一緒に考えていく姿勢が、ご家族双方の納得感につながります。

まとめ|変化を前提に寄り添い続けることが大切

  • 親の意見が変わるのは、ごく自然なこと
  • 一度の会話で結論を出そうとしない
  • 繰り返し対話することで、本音が少しずつ見えてくる
  • 若い頃の「好き」は、介護の大きなヒントになる
  • 体験や会話を通じて、無理なく自然に引き出す
  • 情報収集よりも「心の準備」としての会話が大切

親の気持ちは揺れ動くものです。だからこそ大切なのは、「正解を求めること」ではなく、変化に寄り添い続ける姿勢です。

その積み重ねが、いざというときの安心と信頼につながっていきます。

想送庵カノン(東京都葛飾区立石)は、ご家族のお別れの時間を大切にする滞在型の安置施設です。日々の会話の延長線上にある葬送のご相談も、ご家族のペースに合わせてお手伝いいたします。

ご相談はお電話( 0120-717-372 無料)
またはお問い合わせフォームからどうぞ

お急ぎの方、ご依頼の方はお電話ください(24時間365日 対応)

よかったらシェアしてね!

この記事の監修者

三村 麻子のアバター 三村 麻子 看取りの水先案内人

あなたを忘れない株式会社
代表取締役 三村 麻子(みむら あさこ)

<想送庵カノン(滞在型安置施設)の運営>
故人と家族が「最後に過ごす時間を大切にする」セレモニーホール

<専門学校>
東京ホスピタリティ・アカデミー
葬祭ディレクター学科 講師

<供養コンシェルジュ>
供養コンシェルジュ協会 理事/講師

<看取りサポートのパイオニア>
高齢者を支える家族に
「疲れない介護」「家族が幸せになる看取りと葬送」を提案。

【看取りの水先案内人として幅広く活動】
家族に深く寄り添う相談スタイルで、
生前のご相談から、お見送りのあとのグリーフケアまで
多数の相談実績と活動歴を持つ終活の専門家。

2004年に葬儀式場の運営に携わって以来、
葬送の現場に立ち続けている。
2019年には、安置と面会に重きを置いた施設として
想送庵カノンを開設。

<サポート内容>
生前整理、介護、葬儀、供養、遺品整理、グリーフケア

<著書>
・初めて喪主になる人のための親を心から見送る葬儀ガイド
・親が死んだ5分後にあなたがしなければならないこと
・離れて暮らす親と上手に付き合うための本
・親には一人暮らしをさせなさい
・親の老後に寄り添うために知っておきたいこと

監修者のプロフィールを見る

目次